スペシャルインタビュー

冷えへの意識を向上させることが大切。 ~温かく、リラックスできるのが良いですね~

漢方と出合い、日本初の「冷え症外来」も開設

―― まず、漢方診療を始められたきっかけについてお聞かせください。

大学病院にいたころニキビに悩まされ、何をやっても治らなかったときに出合ったのが漢方でした。その効果を実感して本格的に勉強を始めたのですが、まずは風邪の治療など、自分や家族にたくさんメリットがありました。西洋医学ではなかなか治療の対象とならない「冷え」なども、漢方では重要な不調の原因、いわゆる未病のひとつとして治療を行います。また、漢方は検査異常や病気の有無にかかわらず、ご本人の辛い悩みを何とか解決しましょうという考え方なので、これにも共感し、漢方を専門とすることになりました。

―― それが北里研究所で始められた日本初の「冷え症外来」にもつながったわけですね。

検査では異常がなくても、冷えやそれに伴う頭痛などはご本人にとって、とてもつらい症状です。実際、カルテからも非常に多くの方が冷えに悩んでいることが分かりました。女性は約半数、男性でも約1割の方々が冷えの症状を自覚しているというアンケート結果もあります。また、冷え症は単なる冷えの苦痛だけでなく、様々な症状を伴いやすく、漢方処方や生活指導で少しでも改善できるお手伝いをしています。現在は、血めぐり研究会という活動にも参加し、冷え症の予防や改善に関わる様々な啓蒙活動をしています。

冷えについて

―― 冷えは体にいろいろ悪い影響を与えるそうですね

冷えと痛みはとても関係が深いといわれ、頭痛や生理痛などは体を温めることで症状が改善することがあります。風邪のひき始めも冷えが関係しています。ですから、体を内側から温めたり、外側から温めたりすることはても大事です。また、冷えを自覚していなくても、現代の生活では冷房や冷たい飲料水など体を冷やすことが多く、体を温めて体調を整えておくことも大切ですね。

―― 女性と男性では、冷えについての違いはあるのでしょうか?

まず、体内でつくられる熱の約6割は筋肉運動でつくられています。女性は男性に比べて筋肉量が約1割少なく、その分、皮下脂肪は1割ほど多いといわれています。皮下脂肪は内臓が冷えないよう断熱材の役割をするのですが、脂肪組織そのものには血管が少ないため、二の腕やお尻など脂肪が多い部分は冷たいという特徴があります。また、筋肉も脂肪も少ない痩せ型の女性は、発熱量が少ないうえに保温もできないため、より冷えやすいといえるでしょうね。

―― 温めるということでは、首、手首、足首など、いわゆる「首」といわれるところが重要だと聞いたことがあります

そうですね。まず、冷えに対する対処として大切なことが2つあります。1つめは実際にあたためる、ということ。もう1つがリラックスするということです。

首といわれる場所は、太い血管が体の表面に近い所にあるので、冷やしても温めても効果が出やすいのです。そういう場所を、暑いときに冷やしたり、寒いときに温めたりするのは、体を守ることにもつながります。また、運動をして筋肉をつくり、動かすことも大切です。特にふくらはぎは第二の心臓ともいわれ、運動で血流がよくなるとともにむくみも改善されます。

―― もう1つのリラックスについて、これをすると良いということはありますか?

戦闘モードの交感神経を休めることが大切です。五感に訴える気持ちの良いものを取り入れることを普段から心がけておくと良いでしょう。帰宅してお部屋に入った時の匂い、カーテンの色、スーツから部屋着に着替えた際の心地良い感触、お風呂にゆっくり入ってホッとするなど、ご自分を「ゆるめる」ことがとても大切です。忙しい毎日の生活の中で、冷えを取るために頑張るのではなく、頑張り過ぎず、ゆるく続けられることをしてみましょう。また眠る時に締め付けるのはNGです。血流を妨げるようなガードルや靴下(きついもの)は控えましょう。

温めると同時にリラックスもできる羽毛の効果

―― ところで、先生は足を温めるのに羽毛の足首ウォーマーやレッグウォーマーをお使いになられているそうですね

寒い時には本当によく使わせていただいています。この商品がいいと思うのは、まず保温性に優れていること。しかも、羽毛は空気を含むので、温かいのに軽くてわずらわしくない。この快適な着け心地というのも、温めるのと同じように大事なのです。交感神経の緊張を緩めてリラックスすると、血流もよくなりますからね。とても軽いですし、コンパクトで楽に着脱できる点も気に入っています。冬だけでなく、夏も冷房に悩まされる方には、季節を問わずおすすめです。

―― 冬は寝るときに使っても良さそうですね

冬はくつ下をはいて寝る方もいますが、締め付け感があったりしますから商品を選ぶことが必要です。(ゆるめの商品で素材は絹、5本指になっているものも良いでしょう。)その点、この足首ウォーマーはゆるさ調節ができますし、ムレません。優しいあたたかさと軽い付け心地でリラックスできるので、とてもいいと思います。外出用と自宅用に分けて2足揃えて使うと便利ですね。

―― 専門的な立場から、足首を温める効果についてお聞かせいただけますか

下半身は重力に逆らって血流を心臓に戻しているので、血液の循環が悪くなりがちで、冷えやむくみが起きやすいです。また、足首には三陰交(*1)と呼ばれる冷えのツボがあります。そういう場所を温めることは身体に大切ですから、私は足首だけでなく、ひざから下全体を温めてくれるレッグウォーマータイプも使っています。

(*1)足の脛の内側にあり、うちくるぶしの最も高いところから指幅四本上で脛の際にある。

―― 使い方のコツなどはありますか

人間の体は寒いと感じたら、熱を外に逃さないように手足の温度を下げます。ですから、そう感じる前に、予防的に使うのが一番効果的です。身体に「寒い」「冷えている」と感じさせないことが大切なのです。普段から足が冷えやすい方なら、外出前にしっかり足首ウォーマーを巻いて暖かくしてから出掛けるのがいいでしょう。冷えは、体にさまざまに悪い影響を及ぼしますから、じょうずに使って健康に役立てていただきたいと思います。

―― どうもありがとうございました

麻布ミューズクリニック 名誉院長 渡邉賀子(Dr. Caco)

久留米大学医学部卒業。熊本大学第三内科に入局、内科を修める。1997年、北里研究所にて日本初の「冷え症外来」を開設。2003 年、慶應義塾大学病院漢方クリニックにて、女性専門外来「漢方女性抗加齢外来」を開設。慶應義塾大学医学部漢方医学センター非常勤講 師、帯山中央病院院長。医学博士・漢方専門医・日本東洋医学会指導医